高齢化の進行で高齢者が支え合う社会の到来を見据え、鹿児島県瀬戸内町にある加計呂麻島では、「島の保健室」を始めた。住民が抱える生活上の悩みを吸い上げ、看護師や介護士などが地域ぐるみで健康に関する悩みを解決する仕組みを目指している。

この「島の保健室」は、近くにある与論島で働く二人の看護師が、創設のきっかけになったそうだ。二人に寄せられる相談は介護に関することのほか、健康問題や家族に関することなど、幅広いものの、「看護師の存在感は大きく、話すだけでも住民は安心できる」と、島内にある診療所の医師は話す。そもそも加計呂麻島には民間診療所はあるが、近くの他の島と比べて面積が大きく、集落数も多いため、住民の悩みが表面化しづらいと言う。そこで加計呂麻島は、国の指定を受けた機関で教育を受け、一般の看護師より踏み込んだ訪問介護や医療活動ができる「診療看護師」を採用した。集落区長や民生委員らと連携し、住民の悩みを探っていく。診療看護師や介護士、また地域だけで対応できない問題は、社会福祉協議会や介護相談支援施設などの関係者を交え解決策を検討する。

しかし「島の保健室」や「診療看護師」は地域に密着した細やかな訪問介護ができる一方、「離島の離島」ならではの悩みも生じる。それは島をなかなか離れられず、講習会などへの参加が限られてしまい、看護師や介護士の技術向上が難しいということだ。

そこで加計呂麻島では、希望する島内の医療機関と共同出資し、民間のインターネット講座を受講できるようにした。「知識が深まれば住民の安心安全につながる」と期待が寄せられているのだ。