訪問介護の仕事では、利用者の日常生活と密接に関わる以上、お互いに信頼関係を築くことが重要になる。この信頼関係を構築する際にいちばん必要になることが、利用者に対する「共感」である。この共感の実現には、相手の気持ちに寄り添うことが基本だ。
具体的に「相手の気持ちに寄り添う」とは、観察・傾聴・確認という3つの行為から成り立つ。まず「観察」では、利用者の様子を常にチェックすることで、異変があってもスピーディーかつ適切な対応が可能だ。たとえば食欲不振の兆候を観察したら、医師と相談の上でメニュー内容の調整を図ることもできる。
次に「傾聴」では、利用者のニーズや悩みにしっかりと耳を傾けることが大切である。この時に注意すべき点は、利用者を1人の人間として尊重し、決して軽々しい態度で接しないことだ。その逆に、過剰にへりくだる態度も禁物である。「共感」はあくまでも相互対等な信頼関係を築いて、利用者の自立を促すことが目標だからだ。たとえば訪問介護先でも、軽々しい態度で利用者のプライドを傷つけないように、礼儀正しい態度を貫くことが基本である。
そして最後の「確認」についても、利用者への尊厳を守ることに結びつく。訪問介護先ではヘルパーの勝手な思いつきや判断によって、利用者との信頼関係を損なうことがある。まずは利用者のニーズをしっかりと傾聴し、要望を確認した上で行動すべきである。
利用者を1人の人間として尊重していれば、自然とできることだ。たとえば食事介助で調理をする時にも、利用者の日頃の好みや当日の様態などを、事前に聞いてから調理を始めるべきである。